溶接ヒューム法改正に関するQ&A

Q1.金属アーク溶接等作業とは?

 

被膜アーク溶接(手棒等)、半自動溶接、TIG溶接、マグ/ミグ溶接、スポット溶接、サブマージアーク溶接、プラズマ溶接、ガウジング、スカーフィングなど電極の消耗式・非消耗式問わずに放電を利用して行う溶接等の作業および溶接関連作業(準備・片付け・研磨・加工等)をいいます。

自動溶接機(溶接ロボット等)のトーチ部などヒューム発生位置に近い場所で行う制御盤操作や監視作業なども金属アーク溶接等作業に含まれます。

原理的にヒュームの発生を伴わないガス・レーザー・ビームなどを熱源とする溶接・溶断・切断作業、ろう付け、圧接などは該当しません。

 

Q2.塩基性酸化マンガンとは?

 

マンガンの酸化数が2または3の塩基性酸化物で酸化マンガン(MnO)、三酸化マンガン(Mn2O3)が代表的です。溶解フェロマガンヒューム(マンガンと鉄の合金から発生するヒューム)にも含まれます。

 

Q3.マンガンを分析対象としている理由

 

以下は鉄とマンガンの融点・沸点を比較した表です。

元素名

融点

沸点

マンガン

1200

2000

1550

2800

アーク放電を利用する溶接時に生成される溶接プールの温度は1500℃以上であることは明白で、瞬間的にマンガンや鉄の沸点を超えることもあります。

表から分かる通り、マンガンの融点と沸点は鉄よりも低いため、マンガンは鉄よりも先に蒸発します。このため溶接母材・ワイヤー・溶接棒などのマンガン含有量が少ない場合でも、ヒューム中には原材料に比べ相対的に高濃度のマンガンが存在することが各種研究で明らかになっています。

 

別の理由として、溶接ヒューム自体が健康被害を引き起こす仕組みが明確になっていないことが挙げられます。このため許容濃度や基準値・指針値といった管理目標とすべき数値が設定されていません。

また、いくつかの大規模研究において溶接作業従事者にマンガン中毒の症状を示す者が一定割合(23%)で確認されていることや、マンガンのばく露量の多寡と健康被害の重篤さに相関関係が認められるなどの理由もあり、溶接ヒュームに対する管理指標としてマンガンに着目したという経緯があります。

今後、溶接ヒュームに関する新たな知見が示された場合は、管理指標として溶接ヒューム自体の濃度が採用される可能性もあります。

 

 


 

Q4.測定例を具体的に示すと?

 

測定例はコチラをご覧ください。作業者選定方法についての注意点はコチラ

 

Q5.自社で測定したいときはどうすれば良いのか?

 

採取機器を借り受け、試料採取を行い、分析のみ測定機関等に依頼する方法が認められております。その場合いくつか注意点が御座います。

 

ろ紙がつまりやすいので採取器またはろ紙が複数必要になる場合があります。交換はお客様ご自身で行う必要があります。

 

作業内容や従事した時間をお客様自身で記録する必要があります。(例)のような記録が無い場合、不当に低い測定値と判断されるおそれがあります。

Q6.特定化学物質作業主任者は何人必要?

 

何名必要となるかについて、最終的な判断は必ず労働基準監督署にお問い合わせください。

 

-1.建屋が1つの場合

 

1名の選任が義務ですが、講習修了者をもう1名確保しておくことをおすすめします。

当該作業主任者は現場に常駐する必要があるので、当該作業主任者が休んだときや現場作業に出るときに備える必要があるためです。

なお建屋が非常に広い場合や、仕切りがある場合など、作業主任者1名ではその職務の遂行が困難なときは2名以上常駐させる必要があります。

 

 

-2.建屋が複数の場合

 

原則として建屋ごとに1名以上の選任が必要です。

 

 

6-3.カメラ等で作業場を遠隔監視している場合でも、作業主任者は現場に常駐

させる必要があるのか?

 

現場に常駐できる者から選任してください。遠隔監視ではマスクが適切に装着(フィットファクタが確保される装着方法かどうか)されているか確認は困難です。また作業主任者は「作業方法の決定と作業の指揮」に責任を負う点からも、遠隔監視が十分な職務遂行能力を有するとは判断されません。

 

 

6-4.建設現場など複数階層で同時に作業するときは、その階層分の作業主者が必要になるのか?

 

壁や床・天井などで完全に視界が遮られる場合は階層ごとに1名ずつ必要です。柱組などのように視界が開けている場合はその限りではありません。

 

 


 

Q7.特殊健康診断の項目は?実施機関は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Q8.換気装置の風量増加、「その他必要な措置」とは?

 

 

本改正では管理濃度を下回るまで環境改善を繰り返すことを義務づけているわけではなく、全体換気装置に対する要求性能等の定めもありません。

ただし、環境改善効果が十分見込める換気風量や気流生成方法などを風量計算等の合理的な方法により決定し、それに適した性能の換気設備や工法を採用する必要があると思われます。

なお、次のような場合は「換気風量の増加、その他必要な措置」を講じる必要はありません。

・溶接ヒューム濃度の測定結果が管理濃度を下回っていた場合

同一事業場の類似作業場において、濃度測定の結果に応じて十分に措置内容を検討し、当該

対象作業場においてその措置をあらかじめ実施している場合

「その他必要な措置」には次のものが含まれます。

・溶接方法や母材、溶接材料等の変更による溶接ヒューム量の低減

・集じん装置による集じん

・移動式送風機による送風の実施

 

 

 

 

 

 

 

 

Q9.金属ヒュームの発生する作業場で使用できる呼吸用保護具について

 

粉じん則では、金属ヒュームの発生する作業場においては、じん肺発症防止のため「マスク選択通達(H17.2.7)」に基づく区分がRS1、RL1、DS1、DL1に属する呼吸用保護具は使用しないよう求めております。

測定結果から導かれる要求防護係数が4未満で区分1の呼吸用保護具を選択可能であっても、末尾の数字が2以上(RS2DS3など)の呼吸用保護具を選択する必要があります。

オイルミストが混在する作業場においては、RLDLPL等のLが付記された呼吸用保護具を選択してください。有機ガスの発散するおそれのある作業場においては「有機ガス対応防じんフィルター」などの機能を持つ呼吸用保護具または捕集材を選択してください。

 参照:特定化学物質障害予防規則における第2類物質 「溶接ヒューム」に係る関係省令等の解釈等

について(基安化発01151号 令和3年115日)

3(2) 新特化則と粉じん則の関係

 

Q10.フィットテストってなに?

 

10−1.フィットテストとは?

 

計測装置を使って客観的に顔面と面体の密着性を確認することをいいます。

評価対象とするのはフィットファクタ(FF)です。

 

 

10−2.フィットファクタ(FF)とは?

 

労働者の顔面と呼吸用保護具の面体との密着の程度を示す係数のことです。

FF=

呼吸用保護具の外側の測定対象物(空気中の粉じんなど)の濃度

呼吸用保護具の内側の測定対象物(空気中の粉じんなど)の濃度

 

計測結果が呼吸用保護具の種類ごとに下表の数値を満たす必要があります。

不適合の場合は、マスクを装着しなおすなどして適合するまでフィットテストを繰り返します。

呼吸用保護具の種類

要求フィットファクタ

全面形面体を有するもの

500

半面形面体を有するもの

100

 

 

 

10−3.新たに定められること

 

計測装置の要求性能、フィットテスト実施方法、新たな専門資格の設定と有資格者による実施義務化、資格者の養成方法などが新たに定められる見込みです。

新たな情報が入り次第、お知らせいたします。

 

 

10−4.「フィットチェック」との違いは?

 

フィットチェックとは始業前に自己で確認を行う面体の装着性確認操作のことです。

面体を正しく装着し、吸い込み部分をフィットチェック用アダプターまたは手のひらで覆い、息を吸い込んで抵抗の有無やその程度を確認します。抵抗が無いか少なければ顔と面体の間に隙間があるので、締め紐等を調節します。

 

 


 

その他よくある質問

屋内と屋外の区別は?

 

屋内作業場とは・・・

・作業場のある建屋の側面の半分以上にわたって壁、羽目板、そのほか遮蔽物が設けられている場所

・ガス、蒸気または粉じんがその内部に滞留するおそれがある場所

上記以外の作業場は屋外作業場と判断されます。

 

必要となる呼吸用保護具はどのレベルのものが多い?

 

20212月末時点の情報をコチラに示します。

 

溶接ヒュームのばく露量を減らすためには?

 

これまでに行った測定から得られた情報や教訓をもとに、お客様にもご協力いただき、いくつかばく露低減に効果のある対策を見つけることができました。

@  溶接姿勢の改善・・・溶接プールを上から覗き込むような姿勢を極力避ける。

A  適切な電流値の設定・・・溶接ヒュームの過剰発生防止。溶接不具合にもつながります。

B  気流の生成・・・溶接作業者の斜め後方か側方のやや離れた位置に送風機等を設置し、溶接部

に直接風が当たらないように風向きに注意して、適度な強さの気流を作ると、発生した溶接ヒュームは呼吸域に近づくことなく拡散していきます。

注意点は作業者の真後ろから風を当てないこと(カルマン渦が発生し効果が落ちます)、可能であれば換気扇や開口部に向かう(誘引気流を作る)風向きとすること、別の作業者が風下に位置することのないように風向を調整することなどです。

 


 

改正特化則関係法令等リンク集

 

改正政省令の概要

改正政省令の概要 [PDF1,738KB]
再改正省令の概要 [PDF
202KB]
 

改正の根拠となった検討会の報告書

令和22月「令和元年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書」( サイト内リンク 報道発表資料  サイト内リンク 全文 

 

関係法令

改正政令(附則を含む)と新旧条文対照表

PDF 「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令」(令和2年4月22日政令148号) [PDF45KB]
PDF 新旧対照表[PDF
69KB]

改正省令(附則を含む)

PDF 「特定化学物質障害予防規則等の一部を改正する省令」(令和2年4月22日厚生労働省令第89号) [PDF382KB]

告示  

      PDF 作業環境評価基準等の一部を改正する告示(令和2年4月22日厚生労働省告示第192号)[PDF239KB]
PDF 金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等(令和2年7月31日厚生労働省告示第286号)[PDF
104KB]
再改正省令(附則を含む)
PDF 「特定化学物質障害予防規則等の一部を改正する省令及びe-文書省令の一部を改正する省令」(令和3年1月26日厚生労働省令第12号) [PDF
20KB]
 

関係通達等

改正政省令の施行通達

PDF 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行等について(令和2年4月22日付け基発0422第4号) [PDF62KB]
告示(溶接ヒューム濃度測定方法)の施行通達
PDF 金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等の施行について(令和2年7月31日付け基発0731第1号)[PDF
117KB]
特定化学物質障害予防規則における「溶接ヒューム」に係る解釈
PDF 特定化学物質障害予防規則における第2類物質「溶接ヒューム」に係る関係省令等の解釈等について(令和3年1月15日付け基安化発0115第1号)[PDF
95KB]
改正特定化学物質障害予防規則等Q&A
PDF 改正特定化学物質障害予防規則等Q&A[PDF
356KB]
再改正省令の施行通達 
PDF 特定化学物質障害予防規則等の一部を改正する省令及びe-文書省令の一部を改正する省令の施行等について(令和3年1月26日付け基発0126第2号) [PDF
75KB]