更新日:令和 3年 2月27日
改正特化則が令和3年4月1日より施行され、金属アーク溶接等作業により発生する「溶接ヒューム」が特定化学物質に追加されます。
これに伴い現に溶接作業を行っている屋内作業場に関しては令和4年3月31日までに溶接ヒュームの濃度測定を行う必要があります。
屋外で金属アーク溶接等作業を行う場合や、溶接以外で塩基性酸化マンガンを取り扱う事業者様は改正特化則の適用範囲が異なります。詳細については弊社担当者までお問い合わせください。
溶接ヒュームに係る改正特化則の施行・適用時期
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改正の主な内容は以下@〜Iになります。
@ 溶接ヒュームが特定化学物質(第2類物質)に追加されました
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屋内外問わず金属アーク溶接等作業(ガウジング等含む)にて発生するヒュームが対象です。レーザーによる溶断などヒュームの発生しない作業は対象外です。
A マンガンに係る管理濃度の変更、塩基性酸化マンガンも適用対象に
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管理濃度 改正前0.2mg/W → 改正後0.05 mg/W。
B 溶接ヒュームを対象とした「作業環境測定」の適用除外
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作業環境測定法にもとづく定期的な測定は不要です。
C 個人ばく露測定による溶接ヒューム濃度測定の義務化
測定対象物は溶接ヒュームですが、分析・評価対象となるのは溶接ヒュームに含まれるマンガンです。Q3.マンガンを分析対象としている理由は?
【測定時機】
新たに溶接作業を行うとき、作業内容に変更(溶接ヒュームの発生量に大幅な変更があると予測される場合)があるとき、既設作業場:令和3年4月1日〜令和4年3月31日の期間および環境改善措置の実施後
【測定方法】
溶接作業を行う作業者に採取機器を取り付け、溶接作業に従事する全時間(溶接に関連する研磨・準備・片づけ・清掃などの作業含む)を対象に測定を行います。始業から終業まで、休憩時間を除いて8時間程度、採取機器を装着していただきます。採取時間の短縮は認められておりません。
例:午前と午後で同じ作業を繰り返し行うので測定は午前か午後のみとする、というような時間の短縮は出来ないこととなっております。
(採取機器)
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(装着例)
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(想定風景)
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・測定対象者はばく露される溶接ヒュームの量がほぼ均一であると見込まれる作業(均等ばく露作業)ごとに2人以上の適切な数の労働者を選ぶこととなっております。1人の溶接作業者に対して2以上の作業日において試料採取機器を装着する方法での測定も選択可能です。
・測定結果は均等ばく露作業ごとに各測定値の最大値を採用します。
・当該測定は作業環境測定士、作業環境測定機関などの十分な知識と経験を有する者が行うべきとされています。
・建設現場など毎回作業位置が変わる屋内作業場および屋外作業場は対象外です。
試料採取方法・分析方法ほか細部事項については直接お問い合わせいただくか、関係法令・通達等リンク集をご覧ください。
D 特定化学物質作業主任者の選任
「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者講技能講習」修了者より選任する必要があります。業務内容は以下の通りです。
1.
作業の方法の決定、労働者の指揮
2.
全体換気装置等の健康被害を予防するための装置を1ヶ月を超えない期間ごとに1回点検すること
3.
保護具の使用状況を監視すること
E 溶接ヒュームに係る特殊健康診断
常時溶接作業に従事する全作業者が対象です。6月以内に1回の実施、記録の5年間保存、健康診断結果の労働者への通知、所轄労働基準監督署への報告書(特化則様式第3号)の提出などが必要です。従来どおり「じん肺健康診断」の実施も必要です。
F 全体換気装置等による換気と適正な呼吸用保護具の使用
2021年4月1日より実施義務となるもの:全体換気の実施
2022年4月1日より実施義務となるもの:換気風量の増加等による環境改善
機械換気設備による強制換気が必要です。溶接ヒューム濃度測定結果が管理濃度を超えていた場合、換気風量の増加またはその他必要な措置による改善が必要です。改善措置を行った場合は改善効果の確認のため再度Cの測定が必要です。
G 呼吸用保護具の選択方法について
溶接ヒューム濃度測定結果を元に、規定の計算式から求めた要求防護係数以上の指定防護係数を有する呼吸用保護具を選定することとされています。
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C:溶接ヒューム濃度の測定結果(mg/W)
Q9.金属ヒュームの発生する作業場で使用できる呼吸用保護具について
H 呼吸用保護具のフィットテストの義務化
金属アーク溶接等作業に従事する者のうち面体を有する呼吸用保護具を使用する者に対し毎年1回フィットテストの実施が義務付けられます。JIS T8150(改訂中)に定める方法によるフィットファクター(漏れ率または密着性)の定量的評価、記録の保存(3年間)が必要となります。ただし、関連法の改正やJIS改訂に時間を要するため適用は令和5年4月1日からとなりました。
I 特化則の適用を受ける作業場を有する事業者が行うべき事項
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項目 |
内容 |
1 |
安全衛生教育 |
金属アーク溶接等作業に従事する労働者に対し、当該物質の有害・危険性、必要な保護具や措置等について安全衛生教育が必要です。 |
2 |
ぼろ等の処理 |
特定化学物質が付着したウエス等のぼろきれや紙くず等は、蓋や栓をした不浸透性の容器に納める等の措置が必要です。 |
3 |
不浸透性の床 |
コンクリート、鉄板等 |
4 |
関係者以外の 立入禁止措置 |
作業場は関係者以外立入禁止にし、その旨を見やすい箇所に表示する必要があります。 |
5 |
運搬貯蔵時の容器等の使用 |
漏れやこぼれを防ぐため、強固な容器を使用するか確実な包装をする必要があります。 |
6 |
特定化学物質作業主任者の選任(既出のため省略) |
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7 |
休憩室の設置 |
作業場以外の場所に休憩室が必要です。入口には靴への付着物除去のため十分湿らせたマットの設置等を行い、作業衣服への付着物除去のため衣服用ブラシを備える必要があります。 |
8 |
洗浄設備の設置 |
洗顔、洗身またはうがいの設備、更衣設備及び洗濯のための設備の設置が必要です。 |
9 |
掃除 |
床は真空掃除機の使用等で容易に清掃できる構造とし、一日一回以上(溶接関連作業を行った日の夕方が推奨されています)の清掃が必要です。 |
10 |
喫煙または飲食の禁止 |
作業場での喫煙、飲食は禁止とし、その旨を見やすい箇所に表示する必要があります。喫煙室または屋外喫煙所を設けてください。 |
11 |
有効な呼吸用保護具の備え付け等 |
有効な呼吸用保護具を就業労働者の人数と同数以上備え、常時有効かつ清潔に保持する必要がありますので、専用の保管ケース等をご用意ください。 |
罰則規定
特化則に違反した場合、労働安全衛生法第119条の罰則規定により「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されることがあります。